多くの方が「病気やケガに備えるなら医療保険に入っているから大丈夫!」と考えているかもしれませんね。もちろん、医療保険は非常に重要です。しかし、実はその考え方には少し「落とし穴」があるかもしれません。なぜなら、医療保険と、もしもの時に「働けなくなった」場合の保障では、目的が大きく異なるからです。
医療保険は、病気やケガで「入院・手術」をした際の治療費を補填することを主な目的としています。これは、突然の大きな出費から私たちを守ってくれる大切な役割です。しかし、もし病気やケガで長期間働けなくなってしまった場合、収入が途絶えることへの備えは十分でしょうか?
入院は短期化、在宅医療が主流に?医療保険だけではカバーしきれない現実
近年、入院日数は年々短期化傾向にあります。1999年から2020年にかけて、平均在院日数は全体で7日間、特に65歳以上では18.6日も短くなりました。その一方で、自宅で療養する「在宅医療」を受ける患者さんの数は、同じ期間で6.95万人から17.36万人へと大幅に増加しています。
この在宅医療の増加傾向は、私たちが病気やケガと向き合う形が変化していることを示唆しています。しかし、ここで注意が必要です。在宅医療の場合、基本的に医療保険の入院保障の対象外となることが多いのです。今後、ますます在宅医療への備えが重要になってくるかもしれません。医療費の補填だけでなく、「働けなくなったときの収入」への備えを考える際、在宅医療という視点も欠かせません。
公的制度の限界を知っていますか?特に自営業の方は要注意!
「働けなくなっても、公的な制度があるから安心」と思われるかもしれません。確かに、代表的な保障として「傷病手当金」があります。これは、健康保険に加入している方が、病気やケガで仕事を休み、給与が支給されないなどの一定条件を満たした場合に受け取れる制度です。
しかし、傷病手当金にはいくつかの制約があります。
• 支給限度額は、休業前の収入の約2/3です。
• 支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月と限りがあります。
• そして最も重要な点として、自営業者など国民健康保険に加入している方は、傷病手当金をもらうことができません。
また、長期にわたって働けなくなった場合には「障害年金」という公的制度もあります。これは病気やケガによって一定の障害状態になった場合に受け取れますが、受給には「障害認定」が必要となり、初診日から1年6ヶ月経過しているか、症状が固定しているといった条件を満たす必要があります。
これらの公的制度だけでは、特に自営業やフリーランスの方、あるいは法人の経営者の方が長期間働けなくなった際の収入減少をすべてカバーすることは難しいのが現状です。
「収入」を守るために、もう一つの備えを検討しよう!
そこで検討したいのが、「就業不能保障保険」です。この保険は、病気やケガによって長期間働けなくなった際の「収入の補填」を目的としています。
具体的には、病気やケガの治療のために医師の指示で入院または在宅療養をしている状態や、所定の身体障害状態・要介護状態になった際に「就業不能給付金」が毎月支払われます。給付金には、例えば60日間の支払対象外期間が設定されています。
この就業不能保障保険には、さらに手厚い保障をつけられるものもあります。
• 特定就業不能給付金: 悪性新生物(がん)、急性心筋梗塞、脳卒中など特定の9疾病による就業不能状態に備えることができます。
• 5疾病入院・特定手術給付金: 5疾病(悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中、慢性腎不全、肝硬変)による入院や特定の治療を受けた際に、一時金を受け取れます。日帰り入院も対象です。
• 精神疾患による就業不能状態への備え: 特則を適用することで、精神疾患を原因とする就業不能状態にも対応できる場合があります。
給付金額のプランや、解約返戻金の有無なども、ご自身のニーズに合わせて選ぶことができます。
大切なのは「保障の目的」を理解すること
医療保険は治療費の補填、就業不能保障保険は収入の補填、とそれぞれ異なる大切な役割を担っています。
「医療保険があるから大丈夫!」という思い込みが、実は「働けないリスク」への準備不足につながっているかもしれません。特に、公的制度の恩恵が限定的な自営業の方や、法人経営者の方にとって、ご自身や会社の未来を守る上で、この「働けなくなったときの備え」は非常に重要です。
この機会に、ご自身の現在の保障内容を見直し、病気やケガで「働けなくなった」場合の収入減少に、本当に備えができているか考えてみませんか?
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